俺がネカマだった実話|高校生に惚れられて大阪まで会いに行った8時間

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ネカマとは?

「ネカマ」という言葉は、「ネット(ネットワーク)」と「オカマ(性別を偽る人)」を組み合わせた日本語スラングで、インターネット上で実際の性別とは異なる性を装って活動する人を指します。特に男性が女性を装う場合に使われることが多いですが、逆の場合も含め広く使われます。

昔、俺がどハマりしてたアプリがある。

アバターを着せ替えたり、髪型を変えたり、おしゃれな部屋作ったりするやつ。
そいつの名前は「LINE PLAY」。
もしかしたら、知っている人もいるかもしれない。

そこで俺が使っていたのは、超可愛い女の子のアバター。
独身社会人の有り余る財力でガンガン課金!
結果、俺のアバターは、他者の追従を許さないレベルで可愛く仕上がっていた。

それだけ気合いが入ったアバターを使っていれば、人気が出るのも当たり前。
毎日何十人ものメンズが、俺の掲示板にメッセージを残していく。
そんな人気プレイヤーだった。

いや、男ってほんとチョロいわ(笑)。

目次

LINE PLAYで女の子を演じていた俺と、高校生の出会い(実話)

そんな日々を繰り返してると、ゲームの中で仲良くなるやつも出てくる。
仮に名前を「健太」にしとくけど、大阪の高校1年生の男の子でさ。
明るくてノリも良くて、優しくて超いいヤツなんだ。

で、ここから俺の黒歴史が始まるわけなんだけど…。

俺、新社会人どころか既に管理職だったんだけど「社会人になりたての女の子」って設定で健太と絡んでたんだよね。
「仕事がなかなか覚えられなくて辛い…もうやめたい。」
「学生に戻りたいよ」とか、事あるごとに健太に甘えていた。

健太は優しいから、いつも黙って俺のグチや毒を聞いてくれていた。

いや、冷静に考えるとヤバいよね?
でも、そのときは楽しくてさ。

そのうちLINE交換するようになって、毎日他愛もない話なんかをやりとりするようになった。
当時は俺も独身だったし、学生の日常を垣間見ている様で楽しかったよ。
健太はバスケ部なんだけど、聞く話聞く話全てが青春真っ只中で、俺まで高校生に戻ったような気持ちにさせてくれたんだ。

ただ、通話と写メはNGにしてた。理由は言わずもがな。

そしたらある日を境に、健太の様子がちょっと変わり始めたんだよね。

LINEの文面がなんか甘いというか、距離感詰めすぎというか……。
鈍感な俺でもさすがに察したよ。

「健太、俺に惚れたな。」

ネカマのまま惚れられた俺|告白された瞬間と揺れた気持ち

そう、健太、完全に俺に惚れてた。
深い愛を感じたね。

で、ある日とうとう告白されたんだ。
「好きになっちゃいました、俺と付き合ってください!」って。
どストレートに言われたもんだから、「はい」って言いそうになったよ。
俺も健太の事が好きになってたのかもね(笑

でも、東京と大阪だよ?遠距離じゃん。
なかなか会えないじゃん。
いやそういう問題じゃない。

もう、その瞬間の俺の感情と言ったらさ、嬉しいんだか申し訳ないんだか分からんわけよ。
何なら「俺って誰だっけ?」って自分にツッコミ入れたくなるレベル。

もちろん、「ごめん、付き合えない」ってちゃんと断ったさ。
社会人と高校生の恋愛は難しいよ。
健太は未成年だしね。俺捕まっちゃう。
いやいや違う。

健太も健太でなかなか諦めなくてさ、こう言うんだよ。
「一度でいいから会いたい。そしたらそれでちゃんと諦めるから。」

心打たれるよね?相手高校生だよ?一年生だよ?
去年まで中学生だよ?
なんかここまで来たら、俺が健太を騙し続けてきた報いを受けなきゃいけない気がしてきて、結局会うことを了承しちゃった。

ただ、高校生に大阪から東京まで来させるのも気が引ける。
新幹線代だって、決して安くないわけだし。
だから俺が大阪に行くことにしたんだよ。車でね。

会う約束をしたのは良いものの、胸の内はもう大混乱。
「俺、何してんだろう」って思いながらも、どこかでこの茶番の結末を見届けたい気持ちもあったんだ。

さて、この先、俺と健太の運命やいかに…。

正体を明かさないまま会う決断|ネカマがバレる前の8時間

健太と約束した場所は、健太の地元である大阪府吹田市のJR吹田駅ロータリー。

最初はなんて読むのかわからなかったけど「すいた」って読むんだって健太が教えてくれた。
気がつけば枚方も箕面も、四条畷だって、読める様になってた。

さて、当日は車で大阪に向かったんだけど、道中ずっと頭の中がモヤモヤ。
そう、まだ健太には俺が男だって伝えてなかったんだ。

海老名SAに着いた時点で、意を決してLINEを送った。

「健太に会う前に謝らなきゃいけないことがあって…俺、実は男なんだよ。本当にごめん。」

…既読スルー。

「嫌になったら、今日来なくても大丈夫だからね」

…またもや既読スルー。

やばい、これ完全に詰んだ。
このまま行ったら、俺刺されるんじゃないか?
いや、むしろ行かずにバックレた方が良くない?

でもなぁ、ここまで来たら逃げられないよなぁ。

己の罪を清算するため、俺は一路吹田に向かった。

吹田駅での対面|ネカマの“俺”を見た高校生の反応とは

東京から吹田に向かうこと約8時間。マジで地獄だった。
長距離をほぼノンストップで運転した上に、心にのしかかる重圧。

車の中で色々な事を考えた。
ああ。あの時、男キャラでLINE PLAYを始めていれば、健太ともいい友達でいれたかもしれないのにな。
いっそタイでち○こ切って女になろうかな。
健太も実は女だったなんて事ないかな。健太JKか…。

そんなくだらないことを考えている間に、車はいよいよJR吹田駅のロータリーに到着。

ロータリー脇に車を停車させ、健太に到着しましたのLINEを送信。
「駅前のロータリーに着いたよ。来なくてもいいから。30分だけ待つね。」

心臓バクバク。マジで怖い。
あいつ、本当に来るのか?
来たら怒鳴られる?泣かれる?殴られる?

反省してもしきれないネカマ人生のツケが、今ここで爆発する…。

30分、俺はただひたすら待ち続けた。お腹痛い。
そして──

待つこと20分。1人の学生が吹田駅にゆっくり近づいて来た。
学校帰りだろうか?

濃いグレーのチェックのパンツ。紺色のブレザー。
部活のものらしきチームパーカーを羽織り、背中にはショルダーバッグ。
真ん中分けの黒髪から覗く表情に、優しさが滲み出ている男子高校生。

…多分健太だ。

そう確信した俺は、車の扉をゆっくり開けて推定健太に近づき…

ついに声をかけた。

「健太くん…かな?」

こちらに視線を向けた推定健太は、俺を見て目を丸くした。

驚愕と恐怖。

優しさの滲み出ていた表情は影を潜め、ただただ恐ろしいものを見る様な表情に変わっていた。

「健太くん?」

もう一度、推定健太に声を掛けるが、返事はない。

俺も固まった。

「え…大丈夫?」って言葉が喉まで出かかったけど、明らかに大丈夫じゃない。
推定健太、完全に俺を見て石像みたいになってる。

そりゃそうだよな。
ゲームの中では社内人なりたて女の子の俺が、現実には社会人の男(29)としてここにいるわけだ。

しかも俺の格好は、ライトグレーに太めのストライプのオーダースーツ。
ピンクのボタンダウンシャツは、ノータイのトレボットーニ。
髪型はサイド0.5mmのツーブロックオールバック。
そして車は…

黒いY32グロリア グランツーリスモアルティマのフルスモーク。

我ながら、怪しさ満載だと思う。
せめて私服を着ていけよと思うかもしれないが、スーツで仕事をしている男に私服を求めるのは酷というもの。

スーツやシャツも、個性的なカラーやデザインのものしか持っていない。
黒地に白のストライプスーツに黒いシャツ、白いネクタイよりマシってやつだ。

車は…俺の好みだ。放っておいてくれ。

とはいえ、このまま健太を放置するわけにもいかない。
覚悟を決めてもう一歩踏み出し、声をかけ直した。

「健太くん、ほんとにごめん。俺、ゲームでは女の子だったけど、実は男なんだ。」

この一言で、俺は人生の恥ランキングトップ3に確実にランクインした気がする。

健太は一瞬動揺したように見えたけど、そのまま何も言わずにショルダーバッグのベルトを握りしめ、後ずさりし始めた。
俺は焦った。

「違う!いや違わないんだけど!俺は健太くんを傷つけるつもりじゃなくて、ただ、どうしてもちゃんと謝りたくて…!」

声が裏返った。情けない。
健太はしばらくしてようやく口を開いた。

「…なんで来たん?」

低くて震えた声。

俺はそれを聞いて、言葉に詰まった。
やはり彼は健太だった。
8時間の移動中にいくらでも考えたはずの言い訳が、全部どっかに吹っ飛んだ。

「いや…その…ちゃんと直接会って謝らないといけないと思って…すまない。」

健太は俺をじっと見つめたあと、ふっと肩の力を抜いた。
そして、少しだけ笑った。

「ほんまにアホやな。」

それが、健太が俺にかけた最初の「本音」だった気がする。

謝罪と別れ、そしてその後──ネカマとしての結末(実話)

健太の「ほんまにアホやな」の一言で、場の緊張がふっと和らいだ。

「コンビニ行こか」健太が言った。

「ハハッ」
俺は笑ってしまった。
結果として、健太に怒られることも、殴られることも、泣かれることも無かった。
直接会って謝罪することもできた。
ホッとした瞬間に思わず出た笑い。

健太に連れられて近くのコンビニに入ると、健太は「ブラックサンダー」を2つ買って、1つを俺に差し出してきた。

「これ、東京から来てくれたお礼」

健太の優しさに直接触れた俺は、本当に申し訳ない気持ちと、どこか救われた気持ちで胸がいっぱいになった。
本気で泣きそうになった。

「健太…ほんとごめん」
俺が謝ると、健太は少し照れくさそうに笑いながら言った。

「まぁ、俺としても今日で一区切りやね。来てくれて嬉しかったよ。
こんなイカつい、ヤバそうなおっさんが来るとは思わんかったけどね。」

30手前のお兄さんを捕まえて、何を言ってるんだこいつは!と思ったが、そこはグッと腹の中に収めた。

「じゃ、そろそろ東京に帰るよ。色々ありがとう」
俺が言うと、健太は「うん。ほなまたね」と答えた。

いや次は無いだろう。
お互いそれは分かってはいたけれど、そこには触れないようにして。

車に乗り込み窓を開けると、健太が小さく手を振った。
右手を上げてクラクションを軽く鳴らし、車をゆっくり走らせる。
ミラー越しに見えていた健太の姿が、少しずつ小さくなっていった。



帰りの高速は大渋滞。

普段なら苛立つところだが、今日の出来事を思い返すと、心は意外と晴れやかだった。

その日を最後に、俺はLINE PLAYをやめた。

もちろん、健太とも以降は連絡を取っていない。

なのに、何でこの話を思い出したと思う?



それはね、最近健太から「結婚しました!」のLINEが入ったから。

添付された写真には、ツーブロックオールバックのイカついおっさんになった健太と、顔をスタンプで隠した奥さんが写っていた。
とても幸せそうな笑顔で。

健太、どうかお幸せに!

atch-k | あっちけい
Visual Storyteller/Visual Literature
光は、言葉より静かに語る。

Nikon D500を肩に、街の呼吸を撮り歩き、
写真と言葉を一体化させた 写真詩(Visual Literature) を日々発表しています。

人の姿そのものではなく、
人がいた「余韻」や、空気に残る気配。
そこに、言葉を添えるのではなく、
言葉を写真の後ろに置く。
それが、私のVisual Literatureです。

本業は、物流業界での国際コンテナ船・輸出事務。
現場とオフィスの狭間で、
数字・書類・時間に追われながら、
「記録すること」と「伝えること」の重さを
長年、実務として見つめてきました。

その感覚は、
写真詩だけでなく、レビューやコラムにも流れ込んでいます。
体験を切り取り、構造を整え、
読み物として成立するノンフィクションへ昇華する。
事実を並べるのではなく、
判断と文脈で読ませる文章を心がけています。

長編ノンフィクション
『異世界に行けなかった俺の半生。』(全14章)は、
家庭崩壊、絶望、再起、そして静かな再生を辿った実話。
草思社文芸社大賞2025に応募し、
現在の写真詩表現の源泉を、すべて言葉として書き残しました。

写真詩と文章は、別々の活動ではありません。
どちらも、
光と静寂が立ち上がる瞬間を、記録する行為です。

atch-k | あっちけい
Visual Literature Artist
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